こんにちは、JS2IIUです。Panelについて今回も紹介していきます。よろしくお願いします。
はじめに
Panelを使って開発したアプリケーションが多くのユーザーに使用される場合、アプリケーションのパフォーマンスを最適化し、効率的にスケーリングすることが重要です。特に、リアルタイムデータを扱う場合や、大量のデータを処理するダッシュボードでは、遅延が発生することがあります。本記事では、Panelアプリケーションのパフォーマンス最適化とスケーリング方法について解説します。
キャッシュの活用
Panelは、データや処理結果をキャッシュすることでパフォーマンスを向上させる機能を提供しています。キャッシュを使用することで、同じデータや計算を繰り返す必要がなくなり、応答時間を短縮できます。
データキャッシュの実装
@pn.cache デコレーターを使用すると、特定の関数の結果をキャッシュし、次回以降の呼び出しでキャッシュされた結果を返すことができます。
import panel as pn
import time
pn.extension()
# キャッシュを使用する関数
@pn.cache
def expensive_computation(param):
time.sleep(5) # 重い処理をシミュレーション
return f"Result of computation with {param}"
# ボタンとキャッシュの実装
param_input = pn.widgets.TextInput(name='Parameter', value='Sample')
button = pn.widgets.Button(name='Run Computation')
result = pn.pane.Markdown('')
# 実行関数
def run_computation(event):
result.object = expensive_computation(param_input.value)
button.on_click(run_computation)
# レイアウト
layout = pn.Column(param_input, button, result)
layout.servable()
pn.serve(layout)
@pn.cacheを使って、重い計算処理の結果をキャッシュしています。初回実行時には5秒かかる処理でも、2回目以降の同じ入力に対しては即座に結果が返されます。- キャッシュの活用により、同じ計算を繰り返さずに済み、ユーザーの待機時間を短縮できます。下の動画を参考にして下さい。同じパラメタを2回目に入力した時には文字の表示が早くなっています。
キャッシュのクリア
キャッシュは、時々更新が必要な場合もあります。pn.state.cache.clear() を使ってキャッシュをクリアすることができます。
clear_button = pn.widgets.Button(name='Clear Cache')
def clear_cache(event):
pn.state.cache.clear()
result.object = "Cache cleared!"
clear_button.on_click(clear_cache)
layout.append(clear_button)
clear_cache()関数で、キャッシュを手動でクリアすることが可能です。- キャッシュをクリアすることで、新しいデータや計算を強制的に実行させることができます。
遅延ロードとリソース消費の最小化
遅延ロード(Lazy Loading)は、必要になるまでリソースを読み込まない戦略で、初期ロード時間の短縮に役立ちます。特に、大きなデータセットやリソース集約型のウィジェットを使用する場合に有効です。
遅延ロードの実装
Panelでは、遅延ロードを活用するために、pn.widgets.LazyWidget や pn.depends() を使用できます。次の例では、遅延ロードを活用してウィジェットの読み込みを遅らせます。pn.depends()については、こちらのリンク先を参考にして下さい。
import time
import panel as pn
pn.extension()
# 遅延ロードウィジェット
@pn.depends(pn.widgets.Button, watch=True)
def load_heavy_content():
time.sleep(5) # データの読み込みシミュレーション
return pn.pane.Markdown("### Heavy Content Loaded!")
button = pn.widgets.Button(name="Load Heavy Content")
layout = pn.Column(button, load_heavy_content)
layout.servable()
pn.serve(layout)
@pn.dependsデコレーターを使って、特定のイベント(この場合はボタンクリック)に基づいてコンテンツを遅延ロードしています。- 初期ロード時間を短縮し、ユーザーインタラクションがあった時点で必要なコンテンツを読み込むことで、リソース消費を最小限に抑えることができます。
遅延ロードを行う関数の定義部分の詳しい説明
@pn.depends(pn.widgets.Button, watch=True)
def load_heavy_content():
time.sleep(5) # データの読み込みシミュレーション
return pn.pane.Markdown("### Heavy Content Loaded!")
@pn.depends(pn.widgets.Button, watch=True)
依存関係を指定するためのデコレーターです。pn.widgets.Buttonに依存していることをPanelに伝えています。つまり、この関数load_heavy_contentはボタンの状態が変更されたときに自動的に呼び出されます。watch=Trueによって、ボタンがクリックされた際にリアルタイムでこの関数が実行されるようになります。def load_heavy_content():
ボタンをクリックした際に呼び出される関数です。time.sleep(5)
5秒間の待機を行います。これは、重いデータを読み込むシミュレーションとして使われています。return pn.pane.Markdown("### Heavy Content Loaded!")
ボタンがクリックされた後、5秒後に「Heavy Content Loaded!」というMarkdown形式のテキストを表示します。Panelのpn.pane.Markdown()を使って、Markdownテキストを画面に表示するPaneを生成しています。
非同期処理の利用
PanelアプリケーションがリアルタイムデータやバックエンドAPIに依存している場合、非同期処理を使用することで、レスポンスの遅延を防ぎつつ処理を進めることが可能です。
非同期関数の使用
Panelは、asyncioライブラリと連携して非同期処理を実行できます。次の例では、非同期関数を使って重い処理をバックグラウンドで実行し、UIをブロックせずに応答を返します。
詳しい解説を、記事の最後に載せていますので参考にして下さい。
import asyncio
import panel as pn
pn.extension()
# 非同期処理
async def async_computation(param):
await asyncio.sleep(5) # 重い処理をシミュレーション
return f"Async result for {param}"
# ボタンと非同期処理の実行
param_input = pn.widgets.TextInput(name='Parameter', value='Async Example')
button = pn.widgets.Button(name='Run Async Computation')
result = pn.pane.Markdown('')
async def run_async_computation(event):
result.object = await async_computation(param_input.value)
button.on_click(lambda event: asyncio.create_task(run_async_computation(event)))
# レイアウト
layout = pn.Column(param_input, button, result)
layout.servable()
pn.serve(layout)
asyncio.create_taskを使って、非同期関数を呼び出し、UIがブロックされないようにしています。- 非同期処理は、バックグラウンドで実行されるため、ユーザーインターフェースは引き続き応答性を保ちます。
- 実際の動作の様子です。ボタンクリックして非同期関数が呼び出された後、非同期関数の結果が返ってくるまでの間にパラメタを変えて再度非同期関数を呼び出しています。
スケーリングと負荷分散
Panelアプリケーションが大規模なユーザーベースに対応する必要がある場合、スケーリングの方法も考慮する必要があります。ここでは、一般的なクラウドサービスを使ったスケーリングと負荷分散の戦略について説明します。
Herokuでのスケーリング
Herokuは、手軽にスケーリングが可能なクラウドプラットフォームです。アプリケーションのスケーリングは、次のコマンドで簡単に実行できます。
heroku ps:scale web=2
- このコマンドは、Heroku上でWebダイノを2つに増やすことで、より多くのリクエストを処理できるようにスケーリングします。
- スケーリングは、自動的に負荷分散され、ユーザーからのリクエストが適切に処理されます。
Dockerを使ったスケーリング
Dockerを使ってPanelアプリケーションをコンテナ化することで、効率的にスケーリングが可能です。次の例は、PanelアプリをDockerコンテナで実行するための Dockerfile の例です。
# Dockerfile for Panel App
FROM python:3.9-slim
# 必要な依存関係をインストール
RUN pip install panel
# アプリケーションファイルをコピー
COPY app.py /app.py
# アプリを起動
CMD ["panel", "serve", "app.py", "--address", "0.0.0.0", "--port", "5006"]
- Dockerコンテナを使ってアプリケーションをデプロイすることで、柔軟なスケーリングが可能になります。Kubernetesなどのオーケストレーションツールと組み合わせることで、自動スケーリングも実現できます。
まとめ
Panelアプリケーションのパフォーマンスを最適化することで、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、効率的なスケーリングによって多数のユーザーにも対応できるようになります。キャッシュの活用や非同期処理、遅延ロードを適切に組み合わせることで、リソース消費を最小限に抑えつつ、高いパフォーマンスを維持できます。また、スケーリングと負荷分散を通じて、大規模なユーザーにも対応する柔軟なアプリケーションの運用が可能です。
次回は、機械学習モデルをPanelアプリに統合する方法について解説します。お楽しみに!
補足:非同期処理のサンプルプログラム説明
1. ライブラリのインポートとPanel拡張機能の有効化
import asyncio
import panel as pn
pn.extension()
import asyncio
Python標準ライブラリのasyncioをインポートしています。asyncioは非同期処理を簡単に扱うためのライブラリで、複数の処理を同時進行で効率的に実行することができます。import panel as pn
Panelライブラリをインポートしています。pnという短縮名で使うことで、コードがより簡潔になります。pn.extension()
Panelの拡張機能を有効にします。これによって、ウィジェットやPane(表示コンテンツ)を使うためのリソースが読み込まれ、Panelアプリケーションが動作するために必要な準備が整います。
2. 非同期計算を行う関数の定義
async def async_computation(param):
await asyncio.sleep(5) # 重い処理をシミュレーション
return f"Async result for {param}"
async def async_computation(param):
これは非同期関数(asyncキーワードを使って定義)です。この関数はawaitを使って非同期処理を一時停止し、他の処理を実行できるようにします。この関数は「重い計算」をシミュレーションするため、非同期に5秒間待機します。await asyncio.sleep(5)asyncio.sleep(5)を使って、5秒間待機します。この部分は、重い処理や長時間かかる計算の代わりに用いられており、実際の計算の待機時間をシミュレートしています。return f"Async result for {param}"
非同期処理が終わると、引数paramの値を含む結果文字列を返します。この文字列は、後に計算結果としてユーザーに表示されます。
3. ウィジェットと表示用Paneの作成
param_input = pn.widgets.TextInput(name='Parameter', value='Async Example')
button = pn.widgets.Button(name='Run Async Computation')
result = pn.pane.Markdown('')
pn.widgets.TextInput(name='Parameter', value='Async Example')
テキスト入力フィールドのウィジェットを作成しています。ユーザーはこのフィールドに文字列を入力できます。初期値は'Async Example'で、名前は'Parameter'です。pn.widgets.Button(name='Run Async Computation')
ボタンウィジェットを作成しています。このボタンをクリックすることで、非同期計算が実行されます。ボタンの表示名は'Run Async Computation'です。pn.pane.Markdown('')
Markdown形式のPaneを作成しています。ここに非同期処理の結果を表示します。最初は空の状態ですが、計算結果が表示されるとこの部分が更新されます。
4. 非同期計算をボタンクリックに結びつける処理
async def run_async_computation(event):
result.object = await async_computation(param_input.value)
button.on_click(lambda event: asyncio.create_task(run_async_computation(event)))
async def run_async_computation(event):
この関数はボタンがクリックされたときに実行され、async_computation()関数を呼び出してその結果を取得します。非同期関数なので、awaitを使って結果が返ってくるまで待機します。result.object = await async_computation(param_input.value)
ボタンが押されたとき、テキスト入力フィールド(param_input)から取得した値をasync_computationに渡して非同期計算を行います。計算が完了すると、result.objectに計算結果を代入し、それがMarkdownとして表示されます。button.on_click(lambda event: asyncio.create_task(run_async_computation(event)))
ボタンがクリックされた際に、非同期タスクを作成してrun_async_computation()を実行するように設定しています。asyncio.create_task()は非同期タスクをスケジュールするために使います。
5. レイアウトの構築とアプリケーションの実行
layout = pn.Column(param_input, button, result)
layout.servable()
pn.serve(layout)
pn.Column(param_input, button, result)
PanelのColumnコンテナを使って、入力フィールド、ボタン、結果表示用Markdownを縦に並べたレイアウトを作成します。layout.servable()
このメソッドにより、レイアウトを「servable」(提供可能)な状態にします。このレイアウトは、Webアプリケーションとして外部からアクセス可能なものになります。pn.serve(layout)
アプリケーションをローカルホスト上で実行します。この行により、Webブラウザを通じてアプリケーションにアクセスできるようになります。デフォルトでは、アプリケーションはhttp://localhost:5006/でホストされます。
全体の流れ
- ユーザーがテキスト入力フィールドに値を入力します(デフォルトは “Async Example”)。
- ボタンをクリックすると、非同期処理が開始されます。
- 非同期処理は5秒間待機し、その後計算結果が生成されます。
- 計算結果がMarkdownとして表示されます。
このコードは、非同期処理をPanelで扱う方法を示しており、ユーザーの操作に基づいて処理を遅延させたり、非同期タスクを実行したりする場合に役立ちます。非同期処理を行うことで、重い処理がバックグラウンドで実行されている間、他の操作がブロックされないというメリットがあります。

