こんにちは、JS2IIUです。
今回は、PythonのWebアプリケーションフレームワークであるStreamlitにおけるロギングの活用方法について、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。
ロギングは、エラーの検知やアプリの動作確認、パフォーマンスチューニングなど、多くの場面で不可欠な技術です。しかし単純にログを取るだけでなく、ログの一貫性やパフォーマンスへの配慮、さらにはCI環境での運用まで考慮すると、かなり奥が深い領域でもあります。
この記事では、Streamlitアプリでの基本のロギング方法から、カスタムロガーの作成、非同期ロギング、ログの構造化、分析・可視化、複数モジュールでのログ統合、さらには自動テストや継続的インテグレーション(CI)における実践的なロギング運用まで、実用的なコード例とともにステップバイステップでご紹介します。
1. はじめに:ロギングの重要性と役割
ロギングは、アプリケーションの状態やエラー情報を記録し、問題発生時の原因解析や動作確認に役立ちます。特にWebアプリケーションでは、ユーザーの操作ログや処理結果を記録し続けることが、安定的なサービス運用に不可欠です。
Streamlitは手軽にインタラクティブアプリが作れますが、その分、内部の状態確認やエラー解析が難しくなりがちです。きちんとログを取ることで、開発・運用の双方で問題をスピーディに特定できるようになります。
本記事では以下の内容を順に解説します。
- Streamlitでの基本ロギング
- カスタムロガーの設定方法
- 非同期ロギングの導入
- ログメッセージの構造化
- パフォーマンスへの影響評価
- ログ分析と可視化手法
- 複数モジュール間のログ統合
- 効率的なトラブルシューティング
- 自動テスト・CI環境でのロギング活用
2. ロギングの基本
Pythonの標準ライブラリloggingを使い、Streamlitアプリ内にログを出力する基本的方法をご紹介します。
ステップ1:importとlogger作成
Pythonのloggingモジュールを使用する際、loggerを構成せずにlogging.basicConfig()などで直接設定を行うと、グローバルのルートロガー(root logger)の設定を上書きしてしまうという問題があります。これは、複数のモジュールやライブラリが同じグローバル設定を共有しているため、一つのモジュールで設定を変更すると、他のモジュールのログ出力にも予期せぬ影響を与える恐れがあるということです。たとえば、フォーマットやログレベルが意図しない形に変わってしまうと、デバッグが難しくなる原因になります。このような問題を避けるためには、必ずlogging.getLogger(__name__)で名前付きロガーを取得し、そのロガーに対して個別にハンドラーやフォーマッターを設定する方法が推奨されます。これにより、ローカルなログ設定を行いつつ、他の部分に影響を与えない安全なログ管理が可能になります。モジュール単位でのロガー構成は、保守性や可読性の面でも重要なポイントです。
import streamlit as st
import logging
# loggerの作成とレベル設定
logger = logging.getLogger('streamlit_app')
logger.setLevel(logging.DEBUG)
# handlerの設定(コンソール出力)
console_handler = logging.StreamHandler()
console_handler.setLevel(logging.DEBUG)
# フォーマッターの設定
formatter = logging.Formatter('%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s')
console_handler.setFormatter(formatter)
# loggerにhandlerを追加
if not logger.hasHandlers():
logger.addHandler(console_handler)ステップ2:Streamlitアプリ内でのログ出力
def main():
logger.info('アプリが起動しました')
st.title("Streamlit Logging Example")
user_input = st.text_input("文字を入力してください")
if user_input:
logger.debug(f'ユーザー入力: {user_input}')
st.write(f'あなたの入力: {user_input}')
if __name__ == "__main__":
main()ポイント
logger.info(),logger.debug(),logger.error()などのレベルに応じたログ出力ができるStreamHandlerは標準出力にログを表示するため、ストリームリットの端末ログ上に確認可能
3. カスタムロガーの作成と設定
より柔軟にログを管理したい場合は、自分でカスタムロガーを作成し、ファイル出力や複数ハンドラーの設定を行います。
ステップ1:ロガー設定関数を作成
import os
def setup_custom_logger(name, log_file='app.log', level=logging.DEBUG):
logger = logging.getLogger(name)
logger.setLevel(level)
# 既にhandlerがある場合は重複防止
if logger.hasHandlers():
logger.handlers.clear()
# コンソール用ハンドラー
ch = logging.StreamHandler()
ch.setLevel(level)
ch_formatter = logging.Formatter('%(asctime)s - %(levelname)s - %(message)s')
ch.setFormatter(ch_formatter)
# ファイル用ハンドラー
fh = logging.FileHandler(log_file, encoding='utf-8')
fh.setLevel(level)
fh_formatter = logging.Formatter('%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s')
fh.setFormatter(fh_formatter)
logger.addHandler(ch)
logger.addHandler(fh)
return logger詳しくはこちらの記事を参照してください。
ステップ2:ロガーを使う
logger = setup_custom_logger('streamlit_custom_logger', 'streamlit_app.log')
def main():
logger.info('アプリ開始')
st.title("カスタムロガーの例")
val = st.number_input("数値を入力")
if val:
logger.debug(f'入力された数値: {val}')
st.write(f"あなたの入力値は {val} です。")
if __name__ == "__main__":
main()ポイント
- ログファイル
streamlit_app.logにログが追記される - 複数のハンドラーでコンソールとファイル出力を両立可能
logger.handlers.clear()で複数実行時の重複を防止できる
4. 非同期ロギングの導入とその利点
ロギング処理はI/O操作が含まれるため、特に高頻度のログでは処理速度に影響が出ることがあります。非同期ロギングは、メイン処理をブロックせずにログ処理を別スレッドに任せる方法で、パフォーマンス向上が期待できます。
ステップ1:QueueHandler, QueueListenerを使って非同期化
import queue
from logging.handlers import QueueHandler, QueueListener
import threading
def setup_async_logger(name, log_file='async_app.log', level=logging.DEBUG):
log_queue = queue.Queue(-1) # 無制限サイズのキュー
logger = logging.getLogger(name)
logger.setLevel(level)
# 基本のファイルハンドラー(Listenerが使用)
file_handler = logging.FileHandler(log_file, encoding='utf-8')
formatter = logging.Formatter('%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s')
file_handler.setFormatter(formatter)
# QueueHandlerをloggerにセット(非同期でキューに積むのみ)
queue_handler = QueueHandler(log_queue)
logger.handlers.clear()
logger.addHandler(queue_handler)
# QueueListenerを作成し専用スレッドでハンドリング
listener = QueueListener(log_queue, file_handler)
listener.start()
return logger, listenerステップ2:Streamlitアプリ内への組み込み
logger, listener = setup_async_logger('async_streamlit')
def main():
logger.info('非同期ロギング開始')
st.title("非同期ロギングのサンプル")
text = st.text_input("入力してください")
if text:
logger.debug(f'入力内容: {text}')
st.write(f'はじめまして、{text}さん。')
if __name__ == "__main__":
try:
main()
finally:
listener.stop() # アプリ終了時にListener停止非同期ロギングの利点
- メインスレッドはログの書き込み待ちをしないためUIの応答性が向上
- 大量ログや複数ユーザーでの並列処理に有効
- デッドロック回避にも効果的
5. ログメッセージの構造化と一貫性の確保
ログの解析を効率化するためには、ログメッセージを構造化(例:JSON形式)し、一貫したフォーマットで出力することが重要です。
ステップ1:JSONフォーマッターの導入
pip install python-json-loggerステップ2:JSONFormatterを使う例
from pythonjsonlogger import jsonlogger
def setup_json_logger(name, log_file='json_app.log', level=logging.DEBUG):
logger = logging.getLogger(name)
logger.setLevel(level)
handler = logging.FileHandler(log_file, encoding='utf-8')
formatter = jsonlogger.JsonFormatter('%(asctime)s %(name)s %(levelname)s %(message)s %(filename)s %(lineno)d')
handler.setFormatter(formatter)
logger.handlers.clear()
logger.addHandler(handler)
return logger
json_logger = setup_json_logger('json_logger')
json_logger.info('ユーザーログ', extra={'user_id': 1234, 'action': 'login'})ポイント
- ログがJSON形式で出力されるため、ログ収集ツール(ELKやFluentdなど)での解析が容易
extra引数で任意のフィールドを付加できる- 一貫性が保たれることで監視やトラブル解析が効率化
6. パフォーマンスへの影響評価
ログは便利ですが、多量のログ出力はアプリケーションの性能に影響を与えることがあります。ここでは、簡単な遅延計測でログの影響を評価する方法を紹介します。
測定例(基本同期ロギング)
import time
start = time.perf_counter()
for i in range(1000):
logger.debug(f'ログメッセージ{i}')
end = time.perf_counter()
st.write(f'同期ロギングにかかった時間: {end - start:.4f}秒')非同期ロギングでの比較
上記のコードを非同期ロギング環境で試し、処理時間の違いを比較してください。
非同期ロギングは大抵の場合、処理時間を大幅に短縮できます。
7. ログデータの分析と可視化
収集したログは放置せず、適切に分析して改善に活かしましょう。ここでは代表的な分析手法とツールを紹介します。
- ログ解析ツール
- ELKスタック(Elasticsearch, Logstash, Kibana)
- Fluentd
- Grafana Loki
- 分析ポイント例
- エラーレートの推移
- ユーザー操作の傾向
- 応答時間の分布
可視化の基本例(Kibanaダッシュボード)
ログをElasticsearchに格納し、Kibanaでログレベルごとの発生数をグラフ化することで、問題領域の把握が容易になります。
■ Kibanaダッシュボードとは?
Kibanaダッシュボードとは、Elasticsearchに保存されたデータをグラフやチャート、テーブルなどの形式で可視化し、一画面にまとめて表示できる機能です。ログの監視、システムの健全性のチェック、ビジネス分析などに使われます。
■ 主な特徴
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| インタラクティブ | グラフをクリックしてフィルターを適用したり、時間範囲を動的に変更できます。 |
| 再利用可能 | 作成した可視化を他のダッシュボードでも使い回せます。 |
| リアルタイム更新 | データが更新されると、ダッシュボードも自動で反映可能です。 |
| 共有可能 | URLを使って他人とダッシュボードを簡単に共有できます。 |
■ 使い方の基本ステップ
- Elasticsearchにデータを投入
- ログやアプリケーションデータなどをElasticsearchに保存。
- Kibanaでインデックスパターンを設定
- 検索対象となるデータをKibanaに認識させます。
- Visualizeで可視化を作成
- バーチャート、円グラフ、テーブルなどを作成。
- Dashboardに追加
- 複数の可視化を一つのダッシュボードにまとめて表示。
■ 代表的な利用例
- システムログの監視:Webサーバーのアクセスログをリアルタイムに表示
- セキュリティ分析:不正アクセスの傾向を視覚化
- 業務KPI分析:売上やアクセス数などのビジネス指標の可視化
■ まとめ
Kibanaダッシュボードは、Elasticsearch上のデータを直感的に分析・監視できる非常に強力なツールです。視覚化により洞察を得やすくなり、トラブルの早期発見や意思決定のサポートに役立ちます。
8. 複数モジュール間でのログ統合
大規模アプリでは複数のモジュール・パッケージからログを出力します。これらのログを1つにまとめ、一貫した形で管理することが重要です。
ポイント
- ルートロガーを作成し、各モジュールは名前空間付きのロガーを取得して出力する
- ハンドラーやフォーマッターはルートロガーで一括管理することで統一感が生まれる
例:ルートロガー設定
# ルートロガー設定(main.pyなど)
root_logger = setup_custom_logger('my_project')
# 各モジュール
import logging
logger = logging.getLogger('my_project.moduleA')
def process():
logger.info("モジュールAの処理が開始されました")この方法で、すべてのログはmy_project.logに統合され、管理や分析が容易になります。
9. 効率的なトラブルシューティングとログ活用法
トラブル時にはログから原因特定を迅速に行いたいものです。具体的な活用法をいくつかご紹介します。
- ログレベルで判別:エラーは
ERRORレベル、詳細な調査はDEBUGを活用 - タイムスタンプで因果関係を追う
- 相関IDを付与し、複数処理を関連付ける
事例:セッションID付与によるトレース
import uuid
def log_with_session_id(logger, message, session_id=None, level=logging.INFO):
if not session_id:
session_id = str(uuid.uuid4())
logger.log(level, f"[session_id={session_id}] {message}")
return session_id
session_id = log_with_session_id(logger, "処理開始")
# 処理中...
log_with_session_id(logger, "処理中のイベント発生", session_id, logging.DEBUG)セッションIDが付与されたログは後から絞り込みやすく、問題の流れを追跡しやすくなります。
10. 自動テスト環境でのロギング設定
テスト実行時はログ出力が冗長になりがちですが、適切に設定すればテスト結果の診断に役立ちます。
ポイント
- テスト用ロガーは専用に作成
- ログレベルを
WARNING以上に設定し、必要最低限のログに抑える - テスト失敗時のみ詳細ログを出力する仕組みも便利
pytestでの例
import logging
def setup_test_logger():
logger = logging.getLogger('streamlit_test')
logger.setLevel(logging.WARNING)
if not logger.hasHandlers():
handler = logging.StreamHandler()
formatter = logging.Formatter('%(levelname)s - %(message)s')
handler.setFormatter(formatter)
logger.addHandler(handler)
return logger
def test_sample():
logger = setup_test_logger()
logger.info("このログは表示されません")
logger.error("テスト失敗時のエラーログ")
assert 1 == 111. 継続的インテグレーション(CI)でのロギングのベストプラクティス
CI環境では、ビルドやテストのログが問題の早期発見に役立ちます。以下のポイントに注意しましょう。
- ログは標準出力に適切に出すこと(CIツールが捕捉しやすいため)
- ログのボリュームに注意し、重要な部分を分かりやすく出力
- ログファイルをアーティファクトとして保存・共有可能にする
- JSON形式ログを利用し自動解析を容易にする
CircleCIやGitHub Actionsの例
streamlit_app.logをCIのアーティファクトに設定し、テスト失敗時にはログファイルの中身を確認可能にする運用がよく行われます。
詳細については別の記事で説明したいと思います。
12. まとめ
本記事では、Streamlitアプリでのロギングについて、基礎から応用、さらにCI環境での運用まで幅広く解説しました。
- Pythonの標準
loggingモジュールを利用した基本ロギング - カスタムロガー作成による柔軟なログ管理
- 非同期ロギングを実装しパフォーマンス向上
- JSON形式でのログ構造化と一貫性確保
- ロギングがシステムパフォーマンスに与える影響と測定方法
- ログデータ分析・可視化の代表的手法
- 複数モジュール間でのログ統合の重要性
- トラブルシューティングに役立つログ活用例
- 自動テスト・CI環境でのロギングベストプラクティス
ロギングは単なる情報出力だけでなく、アプリの品質を大きく向上させる重要な技術です。ぜひ段階的に導入・活用して、Streamlit開発に役立ててください。
参考リンク
- Python logging公式ドキュメント
- Streamlit公式サイト
- python-json-logger GitHub
- ELKスタックとは – Elastic
- Fluentd 公式サイト
- Grafana Loki 公式サイト
- pytest 公式ドキュメント
最後まで読んでいただきありがとうございます。



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